香川県で自然な出会いを探すなら?うどんと島が繋ぐ縁のつくり方

高松駅前の製麺所。取材で入った朝十一時、茹で釜からもわっと湯気が上がって、メガネが一瞬で白く曇った。隣で同じように立ち尽くしていた人と目が合って、二人で笑った。名前も知らない人と。
天かす入れ放題の桶の前で、次は夜の鶴丸ですね、なんて会話が成立する県。これ、けっこう異常事態だと思うんだよね。
香川は狭い。日本一小さい県で、出会いがないと嘆く声もよく聞く。ただ編集部で香川ゆかりの人に話を振ったら、麺と船の話ばかりで埋まった。狭さが武器になっている。

目次

うどんの前では、初対面の壁が薄い

五百円台の会計で笑い合った

紗良さん、二十六歳。高松駅前のうどん屋で、ぶっかけの中盛りとちくわ天を頼もうとして、隣の人とメニューを覗き込んだそう。会計が五百円台で二人して笑った。次は夜の鶴丸だと教え合ったらしい。
昼に一杯、夜にまた一杯。香川ではそれが普通。茹でたての湯気の前では、初対面でも箸が揃う。
カウンターで横並び、目を合わせなくていい配置。しかも食べ終わるまで十分。ハードルが低すぎるのよ。

三十分の行列は、短い会話の連続

剛志さん、三十六歳。夜二十時過ぎの手打ち店の列に三十分並んだ。作り置きなしの茹でたてで、牛しゃぶカレーうどんを隣の人と同時にすすったそう。
香川の夜はうどんがまだ開いている。昼に飽きた胃が、もう一度動く。
行列は短い会話の連続だと彼は言う。三十分ずっと喋るんじゃない。ちょっと話して、黙って、また一言。あの間隔が自然なんだよね。

うどんの方が名刺より早い

優香さん、二十五歳。観音寺で途中下車して、同僚に連れられてうどん三軒をはしごした。須崎、かなくま餅、やな川。一杯ごとに店が変わり、会計の安さに毎回声が出たそう。
移住したい、仕事なら何でもやる。その場で口走ってしまって、隣の常連に笑われたらしい。
西の端の町では、うどんの方が名刺より早い。彼女の言い方、好きだわ。肩書きを名乗る前に、どの店が好きかで人物像が伝わる県なのよ。

船の十分と、潮の時間

ベネッセの方から歩くと風が違う

みずきさん、三十一歳。直島のフェリーで、建物の地図を広げていた。隣の席の人が、ベネッセの方から歩くと風が違うんですよ、と指をさしたそう。島に着いてからも同じ道を少し並んで歩いた。
アートの島は作品の前で黙る人が多い。黙ったあとの一言が長くなる。
港のうどんより、船の十分の方が記憶に残っている。彼女はそう話していた。着く前の時間って、なんであんなに濃いんだろうね。

砂の道がつながる瞬間

航さん、二十四歳。小豆島のエンジェルロードを干潮に合わせて歩いた。砂の道がつながる瞬間に隣の人と目が合って、恋人の聖地って一人でも渡れますね、と笑い合ったそう。
オリーブ公園までバスが同じで、手延べそうめんの工場でまた鉢合わせした。
潮が戻るまでの時間は、説明しなくても人が並ぶ。制限時間があると、遠慮が吹き飛ぶんだよ。あと二時間で道が消える。その焦りが背中を押す。

キャラクターが船に乗っている

里奈さん、二十二歳。高松港のヤドンだらけのフェリーで、小豆島へ向かう席が隣になった。ぬいぐるみの撮り方を教え合って、島に着いてからもオリーブオイルの店まで並んだそう。
瀬戸内はキャラクターが船に乗っている。その派手さが初対面を軽くする。
真面目な顔で話しかけるのは難しい。でもピンク色のずんぐりした生き物が目の前にいたら、何か言うしかないじゃん?

島が近いから欲張れる

花音さん、二十八歳。女木島と男木島を一日で渡って、高松港で乗り換える列に並んだ。荷物の多い人と、島が近いから欲張れるよね、と笑い合ったそう。猿のいる展望台の話になった。
最後は空港の二階でうどんを締めて、たれが三種あるおでんを分けたらしい。
瀬戸内の島は往復が安い。その安さが人を次の島へ誘う。移動のコストが低い県は、それだけで出会いの回数が増える。

坂と石段は、足を止めさせる

うちわが致死量

恒一さん、三十八歳。金刀比羅宮の石段の途中、ヤドンの油揚げが乗ったうどんの暖簾で足を止めた。階段の途中にうちわがびっしり掛かっていて、隣の人が、致死量ですね、と笑ったそう。
宿で出た白いイチジクの天ぷらにやられて、その話で同じ宿の人と夜まで残ったらしい。
参道は長い分、途中の店で人が滞留する。千三百段を一気に上る人はいない。休む場所が決まっているから、同じ顔と何度も会うのよ。

下りてすぐ一杯

圭介さん、四十三歳。丸亀城の石垣を見上げて、天守までの坂で息を整えた。隣の人が、うどん県の城は下りてすぐ一杯ですよ、と笑って、城下の立ち食いまで一緒に降りたそう。
讃岐富士の流しうどんの噂まで話が伸びて、本気かどうかでまた笑った。
城と麺が近いのが香川らしい。観光と食事の距離が短い。次の予定を誘いやすい地形なんだよね。

歩幅がゆっくりになる場所

誠さん、四十七歳。栗林公園の池の前で、松の手入れを見入っていた。隣の人が、兼六園と来るとここは歩幅がゆっくりですね、と呟いて、南庭まで同じ速度で歩いたそう。
名園は観光バスが着いても、木の根元で立ち止まる人が残る。園を出てから骨付鳥の店を教えてもらったらしい。
速度が落ちる場所では、人が視界に入る。急いでいる人同士は絶対に出会わない。

迷う場所と、乗せる場所

曲がり角を間違えたら

智也さん、三十三歳。土庄の迷路のまちで、曲がり角を間違えて地元の人に案内された。同じ作品の地図を持っている人が多く、ノートに名前を書く列でまた隣になったそう。
聖地は写真より路地の方が会話が増える。港の二階でグッズを見ているうちに、次の便の時間が同じだと判明したらしい。
迷子になれる町、貴重だと思う。道が分からない顔をしている人には、誰かが必ず声をかける。

レンタカーの隙間に人が乗る

玲さん、四十歳。寒霞渓の山頂で、日本一周中のヒッチハイカーに道を聞かれた。山の下まで送って、醤油蔵の匂いのする町まで話が続いたそう。
島のレンタカーは返す時間が決まっている。その隙間に人が乗る。
景色より、乗せた人の次の島の話の方が面白かったって。誰かを乗せる余裕を持っている人のところに、話は集まるんだよなぁ。

橋を渡る列車と、県境を越える夜

一期一会が濃い

萌さん、三十歳。サンライズ瀬戸の個室で、高松から横浜へ朝をまたいだ。車内販売の隣で、昨日まで高松を走っていたんです、と同じ行程の人と出会い、銭湯とうどんの話で夜が明けたらしい。
終着の改札で番号を交換しないまま別れた。それでも、橋を渡る列車は一期一会が濃いと彼女は感じている。
交換しなかったのに覚えている。そういう出会いも、ちゃんと人生に残るのよ。

県境より麺の方が近い

千紘さん、三十五歳。広島と香川を行き来する小さなライブの帰り、高松の路地で同じ公演を観ていた人とばったり会った。ジャンルを越えた初対面が会場では終わらず、駅前のうどんで延長したそう。
交換巡業の夜は、県境より麺の方が距離を縮める。うどんが締めに使える街は、解散のタイミングを一回先送りできる。地味だけど大きい違いだわ。

予定が雑でも、店が受け止める

晋さん、五十一歳。牟礼の源平の里で、オリーブハマチ丼を夫婦で頼んだ。隣のテーブルの人も同じ丼で、漬けの塩気の話になったそう。
急にどこか行きたいと言われて車を出した、正午からの遠出。
香川は予定が雑でも店が受け止める。帰りの高速で彼がぽつりと言ったらしい。思いつきで動ける県って、それだけで人と会う機会が多いんだよ。

香川で声をかけるなら、この順番で

次の一杯を、番号より先に出す

体験談を並べていて笑ってしまった。ほぼ全員が、次の店の話をしている。次は夜の鶴丸、次は骨付鳥、城下の立ち食い。
いきなり連絡先を聞くと警戒される。当然の話。でも、そこ一緒に行きませんか、なら断られてもダメージが浅い。香川はこの誘い文句の在庫が無限にある。店の数が多すぎるから。

待ち時間と移動時間に賭ける

フェリーの十分、行列の三十分、石段の踊り場、レンタカーの車内。香川の出会いは、待っている時間と移動している時間に集中していた。
着いてから何かが起きると思っている人、順番が逆。着くまでの過ごし方で決まる。スマホを伏せて顔を上げる。それだけで変わるって。

島を一つ、増やす

直島、豊島、女木島、男木島、小豆島。高松港から船に乗れば、三十分後には別の空気の中にいる。同じ店、同じ駅、同じ休日。三年続けたら誰にも会わないっしょ。
船賃は数百円。この安さで人間関係を総入れ替えできる県、他にある? 正直、使い倒さない手はないと私は思っている。

小さいことは、不利じゃない

二回目が起きる

体験談を読み返して驚いた。同じ人と二回会っている話が多すぎる。そうめん工場で、ノートの列で、港の二階で、びざんの湯で。
狭い県では偶然が繰り返される。都会なら一期一会で終わる出会いが、ここでは再会になる。最初の一回で完璧に振る舞わなくていい。この安心感、けっこう大きいと思うわ。

空いている時間を選ぶ

連休の直島、桜の栗林公園、満席の船。人が多い日は全員が匿名になる。逆に平日の夜のうどん屋、冬のエンジェルロード、雨の日の迷路のまち。がらんとした場所ほど、隣の人の顔がくっきり見える。
数がほしいなら人混みへ。深さがほしいなら、静かな場所へ。この使い分けができている人が、香川では強い。

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この記事を書いた人

体験ベースの恋活ナビ編集部です。
令和のリアルな出会い事情、デートまでの心理戦、別れ方まで、すべて体験ベースで本気で恋活・婚活したい人に届ける本音ラボ。

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