クリぼっちは恥ずかしい?12人に聞いた本当の過ごし方

十一月の頭、スタジオの床いちめんに綿の雪を敷きつめる。
まだ半袖のスタッフまでいるのに、ツリーの電飾だけはやたらと気合い十分。
毎年この時期、うちの編集部には一足早くクリスマスがやってくる!
サンタ帽をかぶったまま、ふとスマホのカレンダーを開いた。
十二月二十四日の欄は、今年もきれいに真っ白(笑)。
いや別に、気にしてないし…はぁ…
心の中で言い訳した時点で、ちょっとは気にしてるじゃん。

休憩中にその白さをぽろっと口にしたら、まわりから次々に手が挙がった。
うちも、俺も、実は私も。
話を聞いていくうちに分かったのは、クリぼっちの中身が人によって驚くほど違うってこと。

目次

クリぼっちとは?恋人がいない夜のことだけじゃない

クリぼっちは、クリスマスをひとりで過ごすことを指す言葉。
恋人の有無で決まると思われがちだけど、現場で聞いた話はもっと入り組んでいた。
家族と食卓を囲んでいても、心はひとりの夜がある。
友達とカラオケで騒いでいても、中身はひとりきりのことだってある。
逆に、一人用のケーキを予約して映画を見る日が一番気楽だった、なんて声まで出てきたし。

恋人がいるのに、一番大事な夜に隣が空く涼太くん

照明アシスタントの涼太くんは23歳。
彼女はケーキ屋さんで働いていて、十二月はほぼ戦場。
二十四日も二十五日も、朝から閉店まで店頭に立ちっぱなし。
「俺、万年クリぼっちなんすよ」
自分で言って自分で笑ってるけど、恋人はちゃんといる。
まさかの、恋人持ちクリぼっち!
世の中が一番盛り上がる夜に限って、隣の席だけが空いているわけ。

閉店を待って、疲れきった彼女と駅前で缶コーヒーを飲む。
それが二人のクリスマス。
写真映えなんてゼロだし、ケーキの売れ残りすらない。
それでも、ひとりきりとは違う。
世間が思い描くクリぼっちと現場のクリぼっちって、ぜんぜん一致しないじゃん。

恋人がいなくても、寒い夜は過ごさなかった純子さん

衣装を担当してくれている純子さんは38歳。
独身だった三十四年間で、恋人と過ごしたクリスマスは片手で数えられるほど。
意外と、クリぼっちだと感じた記憶はほとんどない。
女友達と鍋を囲んだ年。
家族とチキンを分け合った年。
仕事仲間との忘年会が、イブまでずれこんだこともある。

恋人がいないことと、寒い夜にひとりで凍えること。
純子さんの中で、この二つはまったくの別物だった。
カップル至上の空気が濃い年ほど、流行りはクリぼっちだと言い返す声も増える。
実際、一人暮らしの社会人のかなりの割合が、イブをひとりで迎えているし。
多数派なのに、なぜか少数派みたいな顔をさせられる。
この言葉のややこしさって、そこなのよ。

夜勤でイブが消えるあかりさん、半額ケーキの帰り道

看護師として働きながら、休日の自炊を発信しているあかりさんは29歳。
十二月に入ると、今年もクリぼっちかも、が口ぐせになる。
イブは仮眠室でカップ麺をずるずるすすり、二十五日は日勤。
帰りにコンビニで半額のケーキを買う。
自転車をこぎながら、横目で流れていくイルミネーション。
そのときだけ、山下達郎の定番曲のサビが頭の中で勝手に再生される。
「あれ、ひとりで聞くと慰めっていうより確認作業なんですよ」

恥ずかしいとは、まったく思っていない。
ただ、世間がこぞって特別扱いする夜だからこそ。
自分の毎日がいつもどおりだと浮き彫りになるのが、ちょっとうるさい。

クリぼっちが恥ずかしいのは、街の光がまぶしすぎるから

ひとりでいること自体は、平日の夜と何も変わらない。
変わるのは、光の量。
街じゅうのイルミネーションが、ふだんは誰も気にしない一人の生活を照らし出す。
しかも、やけにくっきりと。
恥ずかしさの出どころは、孤独そのものより、この照らされ方のほう。
十二人分の話を聞いた今、私はそう確信してる。

何もしなかった夜に、あとからラベルを貼った陽菜さん

校閲を担当している陽菜さんは26歳。
去年のイブは家で過ごして、二十五日は普通に出勤した。
思い出そうとしても、特別な場面がひとつも出てこない。
冴えないクリぼっちだった。
そう自分でラベルを貼ったのは、何もしなかった夜を説明するためだった。

最初から肩を落としていたわけじゃない。
考えているうちに、だんだん沈んでいく順番もあるんだよね。
クリスマスなんて普通の火曜日と同じ、と頭で片づけた瞬間。
そう片づけた自分が、急にちょっと気の毒に見えてくる。

イブを前に、陽菜さんは高いケーキを予約するかどうかで長いこと迷った。
正直言って、一人用にしてはなかなかのお値段。
それでもお皿に載せたケーキには、部屋の空気を少しだけ行事に変える力がある。

コスパ最強と言い切った健司さん、皿の上の隙間

フードコーディネーターの健司さんは35歳。
友人に、こう言い放ったことがある。
「クリぼっち最高だろ。恋人がいたら十万飛ぶけど、一人なら一万円でお釣りが来る」
言い終えた直後の自分の顔が、ひどくぼんやりしていたのを健司さんは覚えている。

計算そのものは完璧。
レストランの予約もプレゼントも、いらないし。
でも、計算が正しいことと、夜に誰かの気配がないことは、また別の話。
その年、健司さんはチキンを一人分だけ買って、配信を見ながら食べた。
コスパは文句なしに最高。
最高だと言い切ったあとに残る隙間まで、同じ皿の上に載っていたわけ。

中学のカラオケ事件から、正解がない日になった翔くん

専門学校に通いながらアシスタントをしている翔くんは19歳。
中学生のころ、仲のいい男女で集まってカラオケに行く話が持ち上がった。
親に伝えたら、中学生がそんなところにと待ったがかかる。
相手の親にまで電話が回って、当日ひとりだけ取り残された。
そこからクリスマスに、いいデートの思い出がひとつもない。

最初のずれは小さくても、自分にはこの日の正解がないという感覚だけが残り続ける。
「大人になって一人で街に出ても、実質クリぼっちなのは変わんないっす(笑)」
避けるために外へ出ることが、そのまま一人行動の確認になっちゃう。
笑い話にしてたけど、その笑い声は少しだけ乾いてたんだよなぁ。

予定を埋めようとして、もっと冷えた拓真くん

撮影スタジオのスタッフ、拓真くんは28歳。
好きでもない人とイブを過ごし、帰りの窓に映る自分から目をそらした年がある。
ひとりの夜が落ち着かなくて、マッチングの掲示板で予定のない人を探したの。
会ってみると、相手はホテルの話ばかり。
見た目の話とは、まるで別。
日付を埋めるためだけに隣に人がいることのほうが、ひとりの部屋の静けさより寒かった。

結局、拓真くんはその夜、途中で帰った。
クリぼっちを回避したつもりが、もっと正確な形の孤独を買って帰った気分。
翌年は、ひとりで夜の高速をひたすら流した。
目的地はなし。
手元には、温かい缶コーヒーが一本あるだけ。
寒さの種類を、自分で選び直したってこと。

クリぼっちの過ごし方、楽しんでいる人は自分用の儀式を持っている

毎年クリぼっちを全力で満喫している人たちには、ひとつの型がある。
ひとりの静けさを、無理に消そうとしていないところ。
代わりに、その夜のための予定を自分専用に先回りして押さえていた。

予約名は一人分。美月さんの恒例クリぼっちカラオケ

アイドルの推し活を発信している美月さんは31歳。
イブの夜は、毎年恒例のクリぼっちカラオケ。
受付で書く予約名は、もちろん一人分。
部屋に入ったら、街に流れるカップルソングはわざと全部外す。
入れるのは、自分が追いかけているグループの曲だけ。
ケーキは持ち帰りで予約しておいて、歌い終わってから家でひとりで食べる。

部屋の照明を落とすとき、美月さんがいつも思い出す言葉がある。
同じようにひとりでイブを過ごす人から、いつかかけてもらった一言。
「恥ずかしいことなんて、何もないよ」
ひとりの時間をごまかすための儀式とは、ちょっと違う。
十二月二十四日という日付に、自分用の予定をきっちり割り当てているだけ。

周りが全員カップルでも死角なし。雅人さんの一人フレンチ

食べ歩きの投稿で知られる雅人さんは41歳。
コンビニの予約コーナーに一人用ケーキが並び始めると、今年も来たかと笑う。
ぼっちケーキに、ぼっちディナー、ぼっちコンサート。
言葉は自虐っぽいけど、予定を入れること自体はめちゃくちゃ前向きだし。

雅人さんは毎年、フレンチのカウンターを一人で予約する。
まわりが全員カップルでも、気にならない。
「最初から一人で予約してるんだから、死角なんてないですよ」
誰かに来てもらえなかったわけじゃない。
はじめから、自分をお客さんに指名しているだけ。
誰かと過ごすための店を、自分ひとりの夜を盛りつける器に変えちゃう。
これ、かっこよすぎ!

有給を取って推しのケーキを崩す結衣さん

ウェブ編集部に入って二年目の結衣さんは24歳。
二十五日は有給を取って、朝から映画館へ。
ケーキをどこで予約するかは、秋のうちに決めてある。
推しのコラボケーキを、ひとりで遠慮なく崩していくのが毎年のお楽しみ。

クリぼっちを思いきり味わう側に回ってから、十二月の孤独感はずいぶん薄れた。
薄れたというより、孤独を予定の一部に組みこんだ感じ。
一人で、いいものを食べる。
好きなものを、好きなだけ見る。
日付が特別なのは世間の都合で、中身はただの自分の休日。
そう言い切れるようになるまで、何年もかかった。

それでも光の並木の下を歩けば、余計な感情がほんの少しくっついてくる。
完全に無風にはならない。
そこを隠さず話してくれる結衣さんのこと、私はかなり信用してる。

ひとりの夜を持て余さないコツは、前日までに決めておくこと

三人の話を並べてみると、やっていることは驚くほどシンプル。
どこで過ごすか、何を口に入れるか、何時に始めるか。
この三つを、当日になる前に決めているだけなんだよね。

去年の私は、それを完全にサボった。
二十四日の夜八時にケーキ屋へ駆けこんで、売り切れの札を前に立ち尽くす(泣)。
コンビニの棚もすっからかんで、プリンを一個だけ買って帰った。
空白のまま当日を迎えると、街の光をまともに浴びる時間が一気に長くなる。
予約画面の一人用ケーキは、自虐にも楽しみにもなる便利な道具。
笑いながら予約ボタンを押せたら、その年のクリぼっちはもう半分勝ってる。

冬そのものがしんどい人は、明かりを最小限にしていい

クリぼっちの話題は、どうしても恋人の有無に寄っていく。
けれど、この季節が重たい理由はそれだけじゃない。
カップルの話題より目立たない場所で、冬そのものを持て余している人もいる。

小さなツリーを一つだけ飾る直人さん

グラフィックデザイナーの直人さんは32歳。
育った家は、うまく機能していなかった。
十二月を指折り数えて待った覚えなんて、一度もない。
世間がにぎやかになるほど、家の中の温度差がくっきり浮かぶ。
クリスマスも正月も、イベントというより負荷だった。
帰れば帰ったで湧いてくる罪悪感と、帰らないと決める重さ。
その両方を、毎年抱えている。

今、直人さんはひとり暮らしの部屋に小さなツリーを一つだけ飾る。
人を呼ぶ予定は、最初からない。
季節に置いていかれる感覚を、最低限の光でつなぎとめるため。
冬が苦手なのは、おかしなことじゃない。
いつか誰かにそう言われた気がする、と直人さんは言った。

自分のためにケーキを焼く早苗さん

料理研究家の早苗さんは44歳。
大切な人とクリスマスを過ごした思い出が、ほとんどない。
子どものころから家の事情で、その日はずっと遠いイベントだった。
友達がサンタの話をする教室で、よかったねと笑いながら、うまく笑えていない自分がいた。
(いいな。うらやましい。なんで私のとこには来ないの)
その三つが重なった気持ちが、二十年以上かけて習慣になった。

今は、ひとりでケーキを焼くこともある。
焼けば、日付がほんの少しだけ自分の側に寄ってくる。
それでも、あの日の教室までは届かない。
届かないと知ったうえで、オーブンの前に立つ。
撮影用のスポンジを切り分けながら、早苗さんは淡々とそう話してくれた。

寒くない部屋で、温かいものを口に入れる。
それだけで、少なくともその瞬間はしのげるから。
ひとり用のチキンを温めて、配信の再生ボタンを押す夜が、今年の正解になる人もいる。
来年は、誰かの隣にいるかもしれない。
日付は毎年同じでも、部屋の人数はずっと固定じゃないし。
今年の夜が静かだからって、人生の季節まで静かだと決めなくていい。
何も感じなかった、と話す人もいた。
それが何かの終わりなのか、感じる回路が眠っているだけなのか。
本人にも、まだ分からない。
ヤケを起こさず冬を越すうちに、家族のケーキを焼く側になった人もいる。
今がその途中の人は、途中のままで大丈夫ですよ。

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この記事を書いた人

体験ベースの恋活ナビ編集部です。
令和のリアルな出会い事情、デートまでの心理戦、別れ方まで、すべて体験ベースで本気で恋活・婚活したい人に届ける本音ラボ。

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