島根県で自然な出会いを探すなら?縁結びの地で始まる恋のリアル

八重垣神社の鏡の池に、紙が浮いている。取材で立ち寄った日、水面に硬貨をのせた紙が三枚並んでいた。一枚だけ、ぐっと早く沈んだ。持ち主の女性が、あっと声を出して顔を赤くしていたのが忘れられない。
縁結びの本場。看板にそう書いてある県で、地元の人は口を揃えて言うのよね。出会いなんてないよ、と。じゃあ結婚している人たちは一体どこで会ったのか。編集部で島根に縁のある人を片っ端から捕まえて聞いてみたら、想像していた答えと全然違った。

目次

神社で祈る前に、隣を見たほうがいい

紙が沈むのが早すぎて照れた日

由紀さん、三十三歳。八重垣神社で鏡の池に紙を浮かべていたら、思ったより早く沈んだそう。周りに人がいるところで当たりが出た感じ、微妙に恥ずかしいじゃん?
そこで隣で同じように祈っていた男性が、早いと近い人だって聞きました、と小さく笑ったらしい。夫婦椿の前で立ち話になり、そのまま宍道湖の夕日まで歩いた。
結局、彼女は一年後に紹介で会った人と結婚した。ただ本人が覚えているのは、池の前で諦めるなと言われた言葉の方なんだって。祈った内容より、隣にいた人の一言が残る。そういうものなのかもしれん。

稲佐の浜まで、同じ方向だった

亮太さん、二十八歳。出雲大社の参道で、日傘を落とした人を拾って渡した。ただそれだけ。稲佐の浜まで同じ方向だったから、砂の上を並んで歩くことになったそう。
神在月の混み方の話から仕事の話へ流れて、大社の外のそば屋で出雲そばを分け合った。参拝そのものより、浜の風の中でまた来るなら声かけてと言えた自分に驚いたらしい。
神様の前では、みんな少しだけ素直になる。あれ不思議だよねぇ。

縁という言葉を、遠慮なく使える土地

正人さん、四十八歳。出雲市駅の近くで、昼間に大社を歩いた人たちと夜にばったり重なった。八人で巡った参道の話が、駅前の店でそのまま続いたそう。
神話の土地に来ると、初対面でも縁という単語を口に出せる。都会で言ったら引かれるであろうその言葉が、ここでは普通に通じる。本人は気恥ずかしそうにしていたけど、悪い気はしなかったと認めていた。

温泉と湯気が、距離を勝手に縮める

美肌の湯、本当ですかね

恵美さん、四十六歳。玉造温泉の湯上がりに、共同の休憩所で隣になった人と話し出した。きっかけは、美肌の湯って本当ですかね、のひと言だけ。
相手は松江在住で、湯の川や海潮にも詳しかったそう。その夜、だんだんの湯の宿の近くの店で果実酒を勧められ、気に入りすぎて空港でも同じ瓶を買って帰ったらしい。
温泉地は湯加減の話から人の話へ一瞬で移る。髪が濡れてぺたんこのまま、化粧も落ちた状態で会話が始まるせいかもしれない。取り繕えない場所って強いわ。

しじみの出汁と、店主のひと言

慎一さん、三十七歳。松江のおでん屋でしじみの出汁をすすっていたら、隣の席の人が香川から一人旅だと判明した。日本酒の合わせ方でめちゃくちゃ盛り上がったそう。
そこへ店主が、また来たね、と去年の顔を覚えていた。隣の人も一緒に笑った。あの瞬間が一番あたたかかったらしい。
名前も聞かずに別れた。それでも次に松江へ行くときは同じ店に寄ると決めているって。カウンターの店は、人を覚える店主がいるだけで出会いの場に化ける。

寒さと天気が、島根では味方になる

凍える格好で店に飛び込んだら

さつきさん、三十五歳。津和野の町並みを歩いていて、あまりの寒さに店へ駆け込んだ。店員がパーカーを勧めてくれて、帰りには飲み屋まで教えてくれたそう。
小浜や舞鶴を経由してきた一人旅の疲れが、その店の暖房でじわっとほどけた。翌朝おなかを壊した話まで、会ったばかりの人に喋ってしまったらしい。自分でも呆れたと笑っていた。

寒い日の出雲はこれ

彩花さん、二十四歳。出雲大社から日御碕へ向かうバスで、窓の夕日を撮ろうとして隣の人と肩がぶつかった。それが始まり。
灯台の下まで一緒に歩いて、日本海に沈む日を黙って見たそう。帰りにセレクトショップで山パーカーを買ったら、店員から寒い日の出雲はこれだと言われ、別の店まで教わった。
参拝の予定より、寒さで店に逃げ込んだ時間の方が人との距離が近かった。予定通りに動いた時間って、案外なにも起きないのよね。

景色が強い場所では、説明がいらない

宍道湖の夕日と、差し出されたハンカチ

あかりさん、三十二歳。宍道湖の夕日を一人で見ていて、涙が止まらなくなった。理由は本人も説明できないと言っていた。
隣のベンチの人は何も聞かず、ハンカチだけ差し出したそう。茜色が消えるまで、二人とも黙って座っていた。暗くなってから、しじみ今夜食べますか、と誘われた。
何があったんですか、と聞かない人。あれができる人、そうそういないよ。景色が強い場所では、説明しなくても人が隣に残る。友人にそう話していたらしい。

桂の木が色づく、その一日

竜也さん、二十六歳。雲南の吉田で、たたら場の桂の木が色づく瞬間を狙っていた。同じ場所に三脚を立てた人が、春の入口、今日が境目ですよ、と教えてくれたそう。
ふるさと村の加工場まで一緒に歩き、添加物を使わない話から暮らしの話へ。自然の一瞬を待つ人は、待っている間に隣の人とつながる。本人の言葉、妙に納得したんだよね。

奥出雲と隠岐、遠い場所ほど話が早い

この酸味、鬼の舌震の川みたい

みどりさん、四十歳。奥出雲の葡萄園で試飲していたとき、隣の人がそう呟いた。地形を味で表現する人、なかなかいないっしょ。
おろちループまで同じ車列になり、そば打ち体験の会場でまた鉢合わせ。太古の地形の話から移住の話に広がって、秋にVIVANTの場所を案内すると約束を交わしたそう。
遠い場所ほど、同じ景色を見た人同士で話が早い。わざわざそこまで来た理由が似ているから、説明を飛ばせるんだと思う。

牛に道を譲ったところから

隼人さん、三十歳。隠岐の知夫村で遊歩道を歩いていたら、牛に道を譲る羽目になった。後ろから来た地元の人と、海を泳ぐ牛って本当に見えるんですか、と笑い合ったそう。
そのまま岩がきの店まで案内され、アカハゲ山からの眺めを二人で見て、船の時間まで話し込んだ。
島は人が少ない分、一度声をかけたらその日の予定がまるごと変わる。これ、島根の離島だけじゃなく県内の山あいでも似たことが起きている気がする。

西部の夜と、火の前の時間

ライブの夜、駅前でばったり

健吾さん、三十九歳。江津の音楽イベントの帰り、駅前で同じ公演を観ていた人と鉢合わせした。ご近所だと思っていたら、実は西部の別の町だったそう。それでも終電まで話し込んだ。
海辺の町は娯楽が少ない。だからライブの夜だけ、普段バラバラの人がどっと集まる。翌朝サップの話になって、凪の日に声かけて、と番号を交換したらしい。

火の番をしていたら夜が更けた

菜穂さん、二十七歳。浜田のふるさと体験村で、BBQの火の番をしていた。東京から来た参加者と、島根の大人の話を聞きに来た理由がぴたりと重なって、夜遅くまで残ったそう。
中学の頃にできなかった泊まりがけが、ここでやっとできた感じがしたと話していた。薪がぱちぱち鳴る音と、山の匂い。ツアーが終わった今も、弥栄の山の写真を送り合っている。

職場の周りにいる人を、見落としていないか

月に一度、書類を渡すだけの関係だった

浩二さん、五十二歳。取引先の経理担当とは、月に一度書類をやり取りするだけの間柄だったそう。松江の事務所と中山間の町を往復するうちに、お互い独身だと分かった。そこから先輩に飲み会へ呼ばれた。
仕事の話の延長で、車で四十分の距離が当たり前になったらしい。彼はアプリを三ヶ月で閉じた。地元の顔が見える関係の方が続きやすい、と。
島根で車四十分は、都市部の電車二十分と同じ感覚。距離を理由に諦めるのは、正直もったいないと私は思っている。

展示の同じ箇所を指さした人

文香さん、四十三歳。松江城の堀を遊覧船で回ったあと、八雲記念館で古事記と出会った話の展示の前で足を止めた。すると隣の人が、セツさんの虫眼鏡、小さいですよね、と同じ箇所を指した。
旧居まで一緒に歩いて、蛙の絵とシャツの展示でまた立ち話。歴史上の人の暮らしを眺めていると、今隣にいる人の話も自然に出てくる。彼女はそう言っていた。
博物館や記念館は、黙って見る場所だと思われがち。でも同じ細部に反応した相手ほど、話が合う確率は高い。

島根で声をかけるとき、絶対に外してほしくないこと

目的地を共有してから、連絡先を出す

浜まで同じ方向、船の時間まで、凪の日に。体験談に出てきた人たちは全員、行き先や次の予定が先にあった。番号交換はおまけ。
いきなり連絡先を求めると警戒される。当たり前だよね。でも、そこまで一緒に歩きませんか、なら断られても傷が浅い。この順番だけは、本気で守ってほしい。

神在月を言い訳にしていい

十月の島根は、全国から神様が集まるという話で県全体がざわつく。観光客も地元の人も同じ話題を持っている状態。これほど話しかけやすい月はない。
逆に言えば、その時期を逃す手はない。混んでますね、のひと言が自然に成立する数少ないタイミングだから。

黙れる相手を探す

宍道湖のベンチ、日御碕の水平線、アカハゲ山の頂上。島根の出会いは、喋らない時間を一緒に過ごした話がやけに多かった。
会話を途切れさせないことが誠実さだと思い込んでいる人、多くない? 私は逆だと確信している。沈黙が痛くない相手かどうか。それを試せる景色が、この県にはいくらでもある。

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この記事を書いた人

体験ベースの恋活ナビ編集部です。
令和のリアルな出会い事情、デートまでの心理戦、別れ方まで、すべて体験ベースで本気で恋活・婚活したい人に届ける本音ラボ。

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