広島県で自然な出会いはある?街と島で恋が動き出す瞬間

宮島口のフェリー、二階のデッキ。取材で乗った日、潮がごっそり引いていて、大鳥居の足元がむき出しになっていた。カメラを構えた人の肩がぶつかって、二人とも小さく謝る。そのあと同時に、歩いて行けそうですね、と言った。船が着く前に会話が始まっていた。
広島は出会いがない。地元の人からこれを何度聞いたことか。でもさ、この県、一本の路面電車で静かな場所と騒がしい場所がつながってるんだよ。そんな街、そうそうない。
編集部で広島にゆかりのある人たちに片っ端から話を振ったら、出るわ出るわ。想像の三倍は具体的だった。

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宮島は、鹿と潮が会話を始めてくれる

桟橋までの十分が残った

みおさん、二十九歳。フェリーで隣になった人と、潮が引いていることで笑い合ったそう。島に上がると鹿が穏やかに脇腹を突いてきて、同じ人に、叫んでも怒られないですよ、と笑われた。
もみじ饅頭の味より、桟橋までの十分の会話の方が記憶に残っている。彼女はそう言っていた。観光地って、目的地に着くまでの時間の方が濃いことあるじゃんね。

餌を出さない約束をした二人

将也さん、三十一歳。あなごめしを買って海岸のベンチに座っていたら、焼き牡蠣の屋台の煙がふわっと流れてきた。隣の人が、潮が満ちると鳥居の足元が消えるんですよ、と教えてくれたらしい。
鹿がゆっくり近づいてきて、二人で餌を出さない約束をした。
神の島では、大きな願いより小さなルールの方が共有しやすい。この一言、ノートに書き写した。縁結びを祈る場所で、実際に距離が縮むのはもっと生活的な瞬間なんだよね。

前夜の島には、別の顔が出る

浩司さん、四十九歳。イベント出展の前日、厳島神社の参道を一人で歩いていた。冬に一度来たきりで、また来られるとは思っていなかったそう。
小さなブースが並ぶ場所で、少し変わった人と隣の席になり、宮島の海水の話が妙に長く続いた。
観光の予定より、前夜の島の方が人の顔が残る。日中の混雑が引いたあとの島は、住んでいる人と働いている人の時間になる。狙って行く価値、あると思う。

鉄板の前では、待ち時間が仕事をする

ヘラの持ち方を見よう見まね

亮介さん、三十六歳。お好み村のビルで、どの階も行列なのに迷って、厳島という名前の店に並んだそう。
隣に並んでいた人が、いつくしま焼はイカ天入ってますよ、と教えてくれた。鉄板の前ではヘラの持ち方まで真似した。関東から来た人は途中で箸に逃げ、地元の人は笑いながらヘラを差し出してくれたらしい。
お好み焼きは待つ時間の方が長い。じゅうっと音が立つまで、みんな手持ち無沙汰。あの間が会話を生む。カウンターで横並び、目を合わせなくていい配置も効いている。

電停を聞いたら、そのまま鉄板まで

ともみさん、四十二歳。市内の路面電車で、次の電停を隣の人に尋ねた。案内してくれたその人が、なぜかお好み村まで一緒に降りてくれて、ヘラの使い方を見せてくれたそう。
原爆ドームの前を静かに通り過ぎ、鉄板の音が響くビルに入るまでの十分間。
広島は静かな場所と騒がしい場所が一本の線路でつながっていて、その乗り換えで人が隣に残る。彼女の表現が的確すぎて、取材メモに二重線を引いた。

黙っていても、隣に人がいる場所

水の音が近いですね

剛さん、四十四歳。平和記念公園のベンチで、何も話さず座っていた。隣の人も同じように黙っていて、立ち上がるときだけ、水の音が近いですね、と一言残したそう。
ドームの前では誰もが声を小さくする。その小ささが、逆に距離を縮めた。
広島の中心は、説明しなくても隣に人が残る場所。友人にそう話していたらしい。私はここ、広島の出会いを語るうえで一番大事な部分だと確信している。沈黙が気まずくない場所を持っている街は強い。

半日で手が四つ動いた

沙耶さん、二十五歳。初めての広島で、料金表の前で固まっていたそう。声をかけてくれた年配の人、リュックが開いていると教えてくれた人、お好み焼き屋でにこにこ迎えてくれた人。自販機の前で傘がぶつかった外国の人まで。
半日で四回、誰かの手が動いた。
大きな駅より、小さな困りごとの方が人を隣に呼ぶ。困っている顔って、実は最強の話しかけやすさなんだよね。完璧に準備していくと、誰も寄ってこない。

尾道の坂は、偶然しか起きない

その角、映画のワンシーンになる

えりかさん、三十二歳。尾道の坂を上って猫の細道へ入った。石垣の上の猫を撮ろうと足を止めたところ、後ろから来た人がぼそっと、その角、映画のワンシーンになるんですよ、と。
古民家の表札と木漏れ日の話になり、寺の境内のコーヒーカップが住職の焼いた尾道焼だと知って、二人で同じ箱にお気持ちを入れたらしい。
狙った絵より、偶然の方が残る。坂だらけの町は歩く速度が落ちる。速度が落ちれば、会話も生まれる。単純な話。

知らない人の一言で泊まる町が変わった

拓真さん、二十七歳。仙酔島の船で隣になった人に、尾道は駅が近くてこじんまりしてるよ、と勧められ、予定を宮島から変えたそう。
商店街の匂いに案内され、夜はラーメンを分けた。
旅先で知らない人の一言で泊まる町が変わる。これが瀬戸内らしさだと彼は思っている。計画を握りしめすぎると、この手の変更は起きない。余白を残しておく旅の方が、人が入ってくる。

パンの列から、島の暮らしへ

千尋さん、四十歳。向島のパン屋にたまたま入って、店の人と移住の話になった。渡船があれば市街地へすぐ行けること、山も海も揃っていること。
紹介された人も、たまたま会った人も気さくで、肩の力を抜いていい土地だと感じたそう。彼女は理想を一つずつ叶えるように島へ移った。最初のパンの列が始まりだった、と。

しまなみと港町、移動の途中で人が増える

橋の上の声は短くて親切

海斗さん、二十三歳。しまなみの入口、尾道側で電動自転車を借りた。曇り時々雨で気分が沈んでいたところ、スタッフが今治までの荷物を先に運んでくれたそう。
途中のカフェで同じ方向の人とカレーを並んで食べ、生口島のレモン畑でまた鉢合わせした。
橋の上は風が強い。声は短くて親切。これ、すごくいい表現だと思わない? 長く喋れない環境が、逆に無駄のないやり取りを作る。同じ方向へ進んでいる人は、必ずどこかで再会する。

乗り継ぎ二十分のたこめし

ゆきのさん、三十三歳。三原駅の乗り継ぎ二十分で、改札の外のたこめしが二つだけ残っているのを隣の人と分けたそう。尾道ラーメン、あなごめし、焼き牡蠣と続いてきた旅の途中だった。
駅弁の列は短いのに会話が速い。次の特急までの時間が、一番自然に肩が並んだらしい。
制限時間があるって、会話の背中を押す。逃したら次は一時間後。その緊張感が遠慮を吹き飛ばす。

仙人が酔う島、向こうですよ

あずささん、三十五歳。鞆の浦の港で、潮の匂いのする店に入った。隣の席の人が指をさして、仙人が酔う島、向こうですよ、と教えてくれたそう。そのままカフェまで一緒に歩いた。
福山駅から一本の町なのに、時間がゆっくり落ちる。牡蠣と日本酒のあと、名前も聞かずに別れたらしい。それでも次は季の酒の店から始めると決めているって。

次の駅の食べ物を教え合う

慎太郎さん、三十八歳。竹原の町並みを歩いていて、格子の家の前で道を尋ねた。案内してくれた人が、倉敷に似てるけど夜は人が消えるよ、と言って、そのまま小さな居酒屋へ連れていってくれたそう。
レトロな壁の前で写真を撮っていた人とも再会し、三原のたこめしの話に。
港町は一つ経由するごとに、次の駅の食べ物を教え合う。広島の海沿いを移動していると、この連鎖がずっと続く。食べ物の話は誰も傷つけないし、次の予定を勝手に作ってくれる。

ライブハウスの夜と、県外からの人

次は尾道の箱に行きます

りなさん、二十六歳。広島のライブハウスで、終演後に県外から来たバンドの人と立ち話になった。次は尾道の箱に行きます、と言われて、自分の予定と丸かぶり。駅まで並んで歩いたそう。
小規模な会場ほど、演奏のあとの距離が近い。彼女は今も、広島と香川を行き来する夜のことを覚えている。
同じ音を聴いていた人同士は、説明を全部飛ばせる。あの曲でしたね、だけで通じる。効率が良すぎる出会い方だわ。

広島で声をかけるなら、これだけは守ってほしい

困っている顔を隠さない

体験談を並べていて笑ってしまった。声をかけられた人の多くが、料金表の前で固まっていたり、道が分からなかったり、荷物で手がふさがっていたりする。
完璧に調べてから行くと、誰も話しかけてこない。少し迷っているくらいがちょうどいい。これ、恋活でも同じだと思うんだよね。隙のない人には、誰も近づけない。

移動時間を出会いの時間に変える

フェリーの十分、路面電車の十分、乗り継ぎの二十分、橋の上の数十分。広島の出会いは、移動の途中で起きている話が圧倒的に多かった。
目的地に着いてから何かが起きると思っている人、順番が逆。着くまでの時間の使い方で決まる。スマホを見ずに顔を上げておく。それだけで確率は変わる。

次の町を聞く、それが連絡先より先

番号交換より前に、次はどこ行くんですか、を置く。体験談に出てきた人たちは全員これをやっていた。次は尾道、次は季の酒の店、次はレモン畑。
行き先を共有した相手とは、再会の理由が自動的に生まれる。断られても痛くないけん。

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この記事を書いた人

体験ベースの恋活ナビ編集部です。
令和のリアルな出会い事情、デートまでの心理戦、別れ方まで、すべて体験ベースで本気で恋活・婚活したい人に届ける本音ラボ。

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