打ち上げの三次会、酔いが回った頃に始まる顔の品評会がある。あの人よかったよね。いや顔自体は普通じゃない?でも目が行くんだよねぇ。この、目が行く、の中身がずっと引っかかっていた。
撮影の待ち時間、編集部の給湯室、移動中の車内。発信を仕事にしている人やスタッフに、顔のどこを見ているのかしつこく聞いてみた。返ってきた答えは想像よりずっと具体的で、少しだけ残酷だった。
パーツの良し悪しではなく、配置で決まっていた
中顔面の短さで、最初のふるいにかかる
美容の発信をしているハルカさん、26歳。職場の先輩が異様に人気なのが腑に落ちず、半年ほど観察したらしい。行き着いた答えは顔の縦幅だった。
目が少し奥まっていて、目の下から鼻の下までが詰まっている。笑うと涙袋がふくらむ。口元は厚みがあるのに、たるまず締まっている。第一印象は可愛い寄りだったのに、話しているうちに男らしさが後から立ち上がってきたそう。整いすぎたイケメンより視線を持っていかれる、と。
中顔面の長さが顔の印象の八割を握っている。ここは私の断言。同じパーツでも縦が詰まれば若く見えるし、目のまわりに力が集まる。逆に縦が伸びると、どれだけ形が良くても間延びして映る。悔しいけど、そういうものだった。
奥目と涙袋。この二つがそろうと視線が外れない
アシスタントのノゾミちゃんは23歳、恋愛の打席数がやたら多い。何人も会ってきた末にたどり着いたのが目元の話。
つり目より、わずかに下がっている人のほうが話しかけやすい。奥目で、笑うと目が細くなるタイプ。そこに作り物じゃない涙袋があると、可愛げが一気に混ざるらしい。
完璧に整った顔より、少し隙があるほうが一緒にいたくなる。この一言、けっこう効きませんか。整いすぎた顔は見る側に姿勢を正させるんだよね。気をゆるめる相手を探しているときに選ばれるのは、笑うと崩れる顔のほう。
唇の厚みは、性格の印象まで書き換える
薄すぎる唇は冷たく見える。ノゾミちゃんはそこも譲らなかった。適度に厚みがあると、話しかけていいんだなと勝手に判断されるとか。
唇は骨格じゃない。乾燥してめくれた皮が浮いていたら、厚みもへったくれもないでしょ。夜に一度塗るだけで印象が動く場所を、放置している人が多すぎる…。
正面じゃなく、隣から採点されている
鼻筋と顎のライン。角ばりすぎない輪郭が効く
ライターのチアキさん、29歳。デートで隣に座った男性の横顔にやられた話をしてくれた。
鼻筋が通っていて、顎のラインがシャープ。ただ角ばりすぎず、輪郭に丸みも残っている。正面では平凡に見えていたのに、横を向いた瞬間に胸がドキッとしたそう。
顔立ちそのものより、全体のバランスと余裕が顔に出ていた。チアキさんはそう言い切っていた。
横顔って自分ではまず見ない。だから何年も手つかずで放置される。スマホを横に構えて撮ると、顎の下の影とか耳の位置とか、正面より情報量が多くてちょっと動揺すると思うよ。
低い声と穏やかな表情も、顔の一部として数えられている
彼女がもうひとつ挙げたのが声のトーン。低めで、話すテンポが急がない人。焦って喋る男性はパーツまで慌ただしく見えるのに、間を持てる人は輪郭まで落ち着いて見えるという。
顔は静止画じゃないんだよね。喋る速さ、まばたきの回数、視線の置き方まで含めて顔。そう考えると、鏡の前でパーツを数えている時間はもったいない。
顔を一切いじらずに、反応だけ変えた三人
眉を整えた翌週、職場の空気が変わった
カメラマンのダイキさん、35歳。以前はぼさぼさの眉を放置していて、鏡に映る自分が実年齢より上に見えていた。撮る側なのに自分の顔からは目を逸らしていた、と笑っていた(笑)。
サロンで形を作ってもらった帰り道、ガラスに映る自分を何度も確認したらしい。数日後、同僚の女性からなんか若くなったねと声をかけられる。合コンでの会話の伸びも明らかに違った。
パーツはひとつも変えていないのに、眉だけで別人!清潔感が勝手に上がった感覚があるとのこと。
最初の一手は眉。ここだけは譲れない。毛の流れが揃って眉尻に向きが生まれると、顔の中心に線が通る。自己流で細くしすぎる事故が本当に多いから、形はプロに作らせて、あとは維持だけするのが安く済むよ。
生え際と眉の距離をいじったら、アプリの反応が跳ねた
デザイナーのソウタくん、31歳。額の広さと目の形をずっと気にしていた人。
やったのは髪型の調整だけ。前髪の落とし方で生え際を濃く見せ、眉と目の距離が近く見えるシルエットに変えた。並行して肌のざらざらを落としたら、マッチングアプリの反応が数字ではっきり動いたという。友人からも雰囲気変わったねと言われるようになった。
眉と目が近いほど彫りは深く見える。生え際に密度があれば、若さと男らしさが同時に出る。骨をいじらなくても、影の置き方で顔は作れるのさ。
口角を下げない。それだけで言われる言葉が変わった
動画編集のユウジさん、36歳。無表情で口角が下がり気味だったせいで、近寄りにくいと言われ続けてきた。
変えたのは三つの動作。話す前に一呼吸置く。相手の話に合わせて目を少し見開く。優しく見てから微笑む。これだけで、なんか安心すると言われる回数が増えた。
骨格は変えられない、でも表情でかなり削れる。写真を撮られるときに口角を下げないだけで写りが違う。長く実験してきた人の言葉には重みがあった。
自分の無表情を動画で確認したこと、ある?私は初めて見た日、画面を伏せてしばらく放置した(泣)。
顔の点数は、首から下と指先で書き換わる
猫背が輪郭をぐしゃっと溶かす
ファッションの発信をしているレイナさん、34歳。彼女の指摘は容赦がなかった。
肩幅がしっかりしていて顔がシャープな人は、Tシャツ一枚で成立する。顔だけ切り取れば平凡でも、体とのバランスで男らしさが立つ。逆に顔が整っていても猫背だと魅力が半減する、とバッサリ。
理屈は通っているんだよね。猫背は顎を前に押し出す。首と顎の境目が消えて、フェイスラインがぼやける。せっかくの輪郭を姿勢で潰している人、街で驚くほど見かける。
肌の調子と髪型がそろって、ようやくモテる顔として完成する。レイナさんはそこで話を止めた。
爪、歯、匂い。清潔感の中身は地味だった
スタイリストのコウヘイくん、28歳。彼が詰めたのは細部だけ。
爪の白い部分を伸ばさない。歯のケアを習慣にする。服のシワを飛ばして、香りは石鹸系に統一。顔は一ミリも変えていないのに、初対面でちゃんとしてる人だねと言われる回数が跳ね上がった。
造形より、細部の積み重ねが清潔感として顔に出る。コスパならこれが最強、と本人は笑っていた。
清潔感という言葉が便利すぎて、何をすればいいか分からないまま終わる人が多い。中身は退屈なほど地味。爪、歯、鼻の下、襟の白さ、袖のヨレ。女性は顔より先にそこを見てるよ。
手をつける順番だけ、間違えないでほしい
眉、肌、髪、姿勢。この並びで効く
いきなり髪型から変える人が多いけれど、順番が逆。眉が整っていない状態で髪だけ攻めても、顔の中心がぼやけたままなんだよね。
まず眉を作る。次に肌のざらつきとテカリをどうにかする。髪はその後。仕上げに姿勢。この順で進めた人ほど、周囲の反応が早く返ってきていた。
洗いっぱなしで何もつけない肌は光を拾わない。くすんで疲れて見える。夜に保湿をひとつ足すだけで、翌朝の顔色がすとんと変わるから試してみて。
骨格は嘆かず、影で作る
中顔面が長いなら、前髪を下ろして縦を分断する。顎のラインがぼやけているなら、体重を数キロ落として姿勢を戻すだけでかなり出てくる。奥目じゃないなら、眉を目に近づけて影を作る。
生まれ持った骨を数えている時間より、影と密度を動かす時間のほうが回収は早い。強めに言い切っておくね。
顔がいい人はいい。それはもう仕方ない。ただ、ここに出てきた人は誰ひとり骨を削っていなかった。眉の毛流れ、口角の角度、背中の丸み。動かせる場所から触っていけば、あの三次会のぬるいハイボールの隣で、名前を挙げられる側に回れる。

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